税計算
税計算表(あるいは「税決定表」)は、FI や MM で消費税を計上する際に、消費税の計算方法や消費税率を決定して消費税額を計算すると同時に、(SD での消費税計上を含めて)消費税を会計転記する際の勘定コードを決定します。
税計算表は、国コードごとに割り当てが行われて、仮受消費税と仮払消費税の両方を一括して制御します。
従って、会社コードや仮払、仮受毎に別々の税計算表を定義することはできません。例えば、FI の会計伝票登録処理では、債権計上、債務計上に関係なく、画面入力した会社コードの国コードから税計算表が決定されます。
SAP 標準では、国コード JP には、日本用の税計算表 TAXJP が用意されていて、TAXJP で日本法人向けの仮払、仮受消費税の税率と消費税勘定が初期設定されています。
税コードと条件マスター
税コードは、消費税の種類や税率を管理するパラメーターで、モジュールに関係なく仮受、仮払消費税を会計転記(=会計伝票登録)する際に必要になります。
税コードは、税計算表ごとに定義されています。例えば、SAP 標準の日本用税計算表 TAXJP には以下のような税コードが初期設定されています。
消費税勘定コードの決定方法
税計算表は、消費税率を決定して消費税額を計算するだけでなく、消費税を計上するための勘定コードを決定する役割も担っています。
なお、勘定コードの決定の仕組みは、FI 会計伝票登録や MM ロジ請求書照合の場合と、SD 請求伝票登録で違いがあります。
自動仕訳とは
自動仕訳とは、ユーザが手動で仕訳を切ることがなく、システムが伝票の内容から自動的に仕訳データを生成することです。
SAP ERPは、自動仕訳の設定が多いシステムであり、特に販売、購買からは検収処理、入出庫処理、請求処理でカスタマイズされたルールに従って自動仕訳が作成されます。
この自動仕訳の仕組みから、SAP ERPは大福帳システムと呼ばれているわけです。
構成要素
自動仕訳処理の設定は主にT030標準勘定テーブルで管理されており、その構成要素は以下のものがあります。
- 内部処理キー
- 判断基準項目
- 設定勘定コード
内部処理キー
入出庫処理時の自動仕訳処理は、対象勘定毎に処理を分割することができます、各勘定の転記処理は内部でそれぞれ3桁の内部処理キーにより識別されます。 内部処理キーは、トランザクション/イベントキ-、TEkey、取引キー、勘定キーとも呼ばれることがあります。
内部処理キーは勘定コード設定の基本項目です、内部処理キーを使って、転記明細が生成される勘定が設定されます。 したがって、転記ごとに少なくとも2つの内部処理キー(転記明細ごとに 1 つずつ) が使用されます。
内部処理キーの一覧は、T030A/T030Wテーブルから確認することができます。
処理キー | 勘定処理 | 詳細説明有 |
---|---|---|
AG1 | 収益 - 代行取引 | - |
AG2 | 販売 - 代行取引 | - |
AG3 | 費用 - 代行取引 | - |
AKO | 受託品消費による差損益 | - |
AUM | 在庫転送による差損益 | - |
BO1 | リベート決済見越し | - |
BO2 | リベート決済収益 | - |
BO3 | 引当金差額 | - |
BSD | 在庫転記 | - |
BSV | 在庫勘定における変更 | - |
BSX | 在庫転記 | ※ |
COC | その他消耗品の評価 | - |
DEL | 信用保証 | - |
DIF | 在庫管理 - 僅少差異 | - |
EIN | 仕入勘定 | - |
EKG | 仕入相殺勘定 | - |
FR1 | 運送費消込 | - |
FR2 | 運送費引当 | - |
FR3 | 通関費用消込 | - |
FR4 | 通関費用引当 | - |
FRE | 仕入運賃勘定 | - |
FRL | 外注サービス | - |
FRN | 外注サービス運送費 | - |
G01 | G01 < テキストなし > | - |
G02 | G02 < テキストなし > | - |
G04 | G04 < テキストなし > | - |
GBB | 定期記帳の相手勘定入力 | - |
HSC | 取扱追加手数料の費用/収益 | - |
KBS | 勘定割当済み購買発注 | ※ |
KDG | MM 換算レート差損益 | - |
KDM | 在庫/購買管理換算レート差損益 | ※ |
KDR | MM 換算レート丸め差損益 | - |
KDV | 下位レベル換算差損益による品目元帳 | - |
KON | 受託品債務 | - |
KTR | 購買価格差異相殺入力 (原価対象) | - |
LKW | 見越/繰延勘定 (品目元帳) | - |
PPX | 事前支払 | - |
PRA | 償却済 WIP との価格差異 | - |
PRC | 価格差異 (AVR 価格) | - |
PRD | 価格差異 | ※ |
PRG | 価格差異 (品目元帳、AVR) | - |
PRK | 原価対象階層における原価差異 | - |
PRM | 償却済 WIP との価格差異 (品目) | - |
PRP | 製品原価コレクタ価格差異 | - |
PRQ | 製品原価コレクタ価格差異 相手勘定入力 | - |
PRV | 下位レベル価格差異による品目元帳 | - |
PRY | 品目元帳の価格差異 | - |
RAP | 再評価による費用/収益 | - |
RKA | Logistics 請求書照合による請求書差額処理 | - |
RUE | 中立引当金 | - |
TXO | 振替転記に関するブラジルの税 | - |
UMB | 再評価による損益 | - |
UMD | 再評価による損益 | - |
UPF | その他運搬費 | - |
VST | 仮払消費税 | - |
WGB | WGB < テキストなし > | - |
WGI | 出庫インフレーション再評価 | - |
WGR | 入庫インフレーション再評価 | - |
WPA | 価格差異からの WIP (内部活動) | - |
WPM | 価格差異からの WIP (品目) | - |
WRX | 入庫/請求仮勘定 | ※ |
WRY | 入庫/請求仮勘定 (品目元帳) (旧) | - |
内部処理キーによって自動勘定設定を処理するプログラムが変わるというイメージでよいです。
判断基準項目
判断基準項目は以下の三つが用意されています。
- 評価グループコード
- 勘定修正キー
このキーは内部処理キーにより意味が変わります。 - 評価クラス
各項目がそれぞれ使用されるか使用されないか、どう使用されるかは、内部処理キーに依存します。
処理ロジック
自動勘定設定処理は内部処理キーにより異なります。詳しくは各業務モジュールのトピックをご確認ください。
財務会計の成果物として、企業外部の関係者に提示する財務諸表と、財務諸表を作成する基礎となる会計帳簿から構成されます。
財務諸表
財務諸表(英:Financial Statements)は、企業が利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態等を明らかにするために複式簿記に基づき作成される書類であり、 一般的には決算書と呼ばれることが多い。 財務諸表は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等計算書等により構成されています。
- 貸借対照表
貸借対照表(英:Balance sheet、略:B/S)とは、決算日などのある一定時点において、企業が保有する資産と、負担している負債、そしてその差額としての資本を一覧表示した報告書です。 - 損益計算書
損益計算書(英:Income statement、略:P/L)とは、ある一定の会計期間(一ヶ月、一年等)における、企業の本業としての売上高の合計額から、Cost(それに対する原 価)とExpense(事業を行う上で必要な販売費および一般管理費等の経費)を差引いていって、最終的な利益(当期純利益)を計算表示する報告書です。 - キャッシュフロー計算書
- 株主資本等計算書
会計帳簿
会計帳簿とは、会計上の取引を記載した帳簿でであり、 貸借対照表、損益計算書を作成する基礎となります。
会計帳簿は、主要簿と補助簿に分類され、さらに以下のように分類されます。
- 主要簿
企業等の取引を体系的に統括する帳簿- 仕訳帳
日々の仕訳を日付順に記録する帳簿です。 - 総勘定元帳
仕訳帳の内容を勘定科目ごとに転記した帳簿です。
- 補助簿
補助的な役割をする帳簿- 補助記入帳
取引が発生したら、日付を追いつつ、詳細を記入した帳簿です。- 現金出納帳
『現金』の取引と残高が一覧で分かる帳簿であり、 『現金』が増減する取引があった時に記入します。 - 当座預金出納帳
『当座預金』の取引と残高が一覧で分かる帳簿であり、 『当座預金』が増減する取引があった時に記入します - 小口現金出納帳
小口現金の各支払額を支払った内容ごとに分けて記帳し、 小口現金の補給と支払の明細を記録するための帳簿です。 - 受取手形記入帳
受取手形を受け取ったときに記入する帳簿です - 支払手形記入帳
手形を振り出したときに記入する帳簿です。 - 売上帳
売上取引に関する詳しい内容を取引の発生順に記録していく帳簿です。 - 仕入帳
仕入れに関する取引を発生順に記録していく帳簿です。
- 補助元帳
特定の勘定についての明細を記録した帳簿です。- 売掛金元帳(得意先元帳)
得意先ごとの『売掛金』の残高が分かる帳簿です。
総勘定元帳の売掛金勘定からは、売掛金全体の増減は分かりますが、どの得意先に、どれだけ売掛金が残っているかはわかりませんので、そのための補助簿です。 - 買掛金元帳(仕入先元帳)
仕入先ごとの『買掛金』の残高が分かる帳簿です。 総勘定元帳の買掛金勘定からは、買掛金全体の増減は分かりますが、どの仕入先に、どれだけ買掛金が残っているかは分かりませんので、そのための補助簿です。 - 商品有高帳
商品の在庫がわかる帳簿です。
商品別に仕入れや売上、返品のたびに、数量や単価、金額(仕入原価)を記入します。
会計帳簿は法律により保存期間が定められています。会社法(会社法第432条)は10年、法人税法は7年です。
マスタ系
生産資源/治工具
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | CRVS_A | オブジェクトID→生産資源/治工具 | - | - |
2 | CRVS_B | 生産資源/治工具→オブジェクトID | - | - |
3 | CRFH | 生産資源/治工具のマスタデータ | CRTX | - |
作業区
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | CRHD | 作業区 | CRTX | - |
2 | CRCO | 作業区を原価センタに割当 | - | - |
3 | CRCA | 作業区能力割当 | - | - |
4 | KAKO | 能力ヘッダ区分 | KAKT | - |
作業手順
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | MAPL | 品目に対するタスクリストの割当 | - | - |
2 | PLKO | タスクリスト - ヘッダ | - | - |
3 | PLFL | タスクリスト - 順序 | - | - |
4 | PLAS | タスクリスト - 作業/活動の選択 | - | - |
5 | PLPO | タスクリスト - 作業/活動 | - | - |
製造バージョン
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | MKAL | 製造バージョン | - | - |
2 | CKMLMV013 | 割当テーブル: 製造指図のプロセス | - | - |
需要予測プロファイル
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | MPRP | 需要予測プロファイル | - | - |
指図
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | AUFK | 指図マスタデータ | - | - |
2 | AFFL | 作業指図順序 | - | - |
3 | AFVV | 作業の数量/日付/金額 | - | - |
2 | AFVU | 作業のユーザ項目 | - | - |
2 | AFFH | 作業区のための生産資源/治工具の割当データ | - | - |
2 | AFVC | 指図内作業 | - | - |
伝票系
作業指図
No. | 技術名称 | 名称 | テキストテーブル | 説明 |
---|---|---|---|---|
1 | AFKO | 作業指図の指図ヘッダ | - | |
2 | AFPO | 作業指図の指図明細 | - |
概要
詳細
このセクションでは各テーブル項目を抜粋して順次説明していきます。
ヘッダデータ(VBRK)
- 販売伝票通貨(WAERK)
取引の通貨が設定されます。受注伝票からコピーされ、変更不可です。 - 伝票条件番号(KNUMV)
この項目と請求書:明細データ(VBRP)の請求明細(POSNR)を使用して、条件データ(KONV)を参照します。 - 会計への転記ステータス(RFBSK)
会計へ転記済みの場合には、'C'が設定されます。
明細データ(VBRP)
- 先行販売管理伝票の伝票カテゴリ(VGTYP)
先行伝票のタイプ。SAP標準では、C:受注、J:出荷、H:返品、I:無償出荷、K:クレジットメモ依頼、L:デビットメモ依頼などがあります。 - 参照伝票番号(VGBEL)/参照明細番号(VGPOS)
参照している先行伝票の伝票番号と伝票明細です。 - 販売伝票(AUBEL)/販売伝票明細(AUPOS)
この請求明細に関連付けられている受注伝票の伝票番号と伝票明細です。
条件データ(KONV)
- 無効条件(KINAK)
条件が有効かどうかを指定します。有効の場合は空白と設定されます。 条件が無効と設定されるのは幾つのケースが存在しますが、主に下記の三つが見られます。
- 何かエラーが発生した場合
この場合、項目の値がX(無効の原因:計算式エラー)と設定されます - 条件マスタから自動提案された後に、ユーザがマニュアルで変更した場合
この場合、条件マスタから自動提案されたレコードの無効条件項目が’M’(無効の原 因:マニュアル入力)と設定されながら、マニュアルで入力された価格を格納するレコードが新たに作成されます - 価格は仕切単価やXX加算などの複数の条件タイプで構成され、それらを小計する条件タイプが存在する場合
この場合、仕切り単価やXX加算などの条件タイプのレコードの無効条件項目が’Y’(無効の原因:後続価格)と設定され、小計のレコードだけは無効条件項目の値が空白になります。
よって、仕切り単価などの条件タイプを指定してその価格を取得する際に、無効条件=空白 OR ‘Y’で条件(トランザクションテーブル)を検索する必要な場合があります。