企業会計原則とは、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約し、企業会計制度の改善統一の目的で1949年に企業会計制度対策調査会が公表した会計基準です。
一般原則
- 真実性の原則
真実の報告を提供すること - 正規の簿記の原則
すべての取引につき正規の簿記に従って、正確な会計帳簿を作成すること - 資本取引、損益取引区別の原則
資本取引と損益取引を明確に区分する - 明瞭性の原則(適切開示の原則)
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせない - 継続性の原則
会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりに変更しない - 保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、適当に健全な会計処理をしなければならない - 単一性の原則
種々の目的のために異なる型式の財務諸表を作成する必要がある場合、信頼しうる会計記録に基づいて作成する
企業がそれぞれ全く異なる会計処理をしていたのでは、投資などにあたって適正な企業判断ができません。
そこで、企業の会計処理の基本ルールとして定められているものが「企業会計原則」です。1949年(昭和24年)当時の大蔵大臣の諮問機関である企業会計審議会が取りまとめたもので、法律ではありませんが、「一般に認められた会計原則:GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)」として広く参考にされています。
企業会計原則には7つの一般原則が規定されています。いずれも会計処理にあたって常に配慮しなければならない原則です。
損益計算書原則
- 発生主義
すべての費用及び収益はその発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない - 総額主義
費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部は一部を損益計算書から除去してはならない - 費用収益対応の原則
一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示する - 包括主義
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない - 実現主義
売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る
損益計算書原則のなかで最も重要なのが「発生主義」です。
貸借対照表原則
- 完全性の原則
貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資産、負債及び資本を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正しく表示するものでなければならない。
ただし、正規の簿記の原則に従って処理された場合に生じた簿外資産及び簿外負債は貸借対照表の記載外におくことができる。 - 総額主義
資産、負債及び資本は総額によって記載することを原則とし、資産の項目と負債又は資本の項目とを相殺することによって、その全部又は一部を貸借対照表から除去してはならない - 流動性配列
資産及び負債の項目の配列は、原則として、流動性配列法によるものとする - 取得原価主義
貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない
正規の簿記の原則によって仕訳された内容は原則としてBS、PLに表示しなければなりません(「完全性の原則」)。
しかし、「重要性の原則」から一定の例外が認められています。すなわち仕訳してもBS、PLに表示しない「オフバランス」の勘定が認められています。
企業会計原則には資産の評価方法として、資産取得時点での金額を資産価値とする「取得原価主義」が採用されています。
しかし、最近では企業価値の適正な評価の観点から、評価時点で評価しなおした金額を資産価値とする「時価主義」が採用され始めています。
関連法律
- 金融商品取引法(旧証券取引法)
- 会社法(旧商法)
- 法人税法