家を建てる時、整地をして土台を作り、骨組みを作り屋根を載せ、壁を作り、内装をして、諸々の設備を整えてと多くの過程を経てやっと完成します。これらの工程を着々と進めていくだけでなく、多くの場合にはその過程で儀式を行います。一般に広く行われている代表的な儀式が「地鎮祭」と「上棟式」です。
地鎮祭
目的
土地を守る神様や、その土地に関わる諸霊に対して、ここに建物を建てさせていただくことや、工事で騒がしくなることへの挨拶と感謝を向ける意味があります。同時に工事の無事を祈願します。
また工事に伴い、ご近所にも少なからぬ迷惑をかけることになるので、そのお知らせとお願いのご挨拶の機会にもなっています。
方法
神職を読んで神式で行うものが最も多いようですが、施主のそれぞれの宗教によって、仏式、キリスト教式で行うことができます。
色々なやり方がありますが、神式なら祝詞をあげ、仏式なら読経をし、キリスト教式なら賛美歌を歌うなどして、お神酒、塩、五穀などを蒔いて土地を浄め、鍬入れなどの儀式を行います。
施主が関係している神社、寺、教会などがあれば、そちらに直接依頼しても良いし、特に何もなけでば建築業者が手配をしてくれます。
準備
地鎮祭では笹を立てて縄で囲った中に、簡単な祭壇を作り、海の幸、山の幸などの供物を備え儀式を行います。これらの施主が準備する場合と業者が準備してくれる場合とがあるので、事前によく打ち合わせをしておく必要があります。
参列者
地鎮祭に参列するのは、施主とその家族、建築業者、場合によっては親しい友人、近所の親しい方なども参列します。
費用
費用はやり方によって変わりますが、おおよそ数万円程度が相場と言われています。神社への初穂料やお寺へのお布施は2〜3万円が相場です。そのほか、準備する供物や浄めの塩、酒、五穀、ご近所への挨拶の品物などの諸費用を含めて数万円くらいです。初穂料やお布施以外の準備するものを業者が準備してくれる場合には、建築費用の中に含まれていることもあります。
また儀式終了後に簡単な宴会を開く場合には、そのための費用が必要です。宴会といっても、車での参列者がほとんどで、また更地で場所もないので、その場で仕出し弁当を食べたり、持ち帰ってもらってりという程度が一般的になっています。
上棟式
目的
棟上げ式、建前などとも言います。土台を作り、柱を立て、棟や梁などの骨組みが完成した時点で行います。組み上がった骨組みの一番高いところに魔除けとなる御幣などを飾り、お神酒、塩、五穀などを蒔いて工事の安全を祈ります。昔はここでお菓子やお餅を蒔いて賑やかに行ったりしたものですが、現在ではほとんど見ることはできなくなりました。
この儀式を取り仕切るのは、現場の棟梁のことが多いですが、施主の希望で地鎮祭と同じように宗教者に依頼して宗教色のある儀式を行うこともあります。
また、上棟は一気に仕上げるために多くの職人さんが集まります。そのため、ここは施主と建築関係者が顔を合わせて親睦を深める良い機会にもなっています。
準備
魔除けのための飾り物、酒、塩、五穀等は施主が準備するのか、建築業者が準備するのか、それぞれあるのでよく確認しておく必要があります。特に施主に希望するものがなければ、業者に全て任せることは可能です。
費用
やり方によってかかる費用は違ってきますが、お浄めの酒、塩、五穀くらいなら数千円程度でしょう。上棟式の後に食事をするなら、そのための費用が必要です。また、ご近所や知人からお祝いのお酒などが贈られることもあるので、そのためのお返しの予算も用意しておくと良いでしょう。
棟梁はじめ工事関係者にご祝儀を渡すという古い習慣がありますが、現在では禁止している建築業者もあるので、確認しておきましょう。
地鎮祭・上棟式は必要なのか?
土地の神様もいると思う人には大切な存在ですが、いないと思う人にとってこれらの儀式が意味のあるものとは思えないでしょう。地鎮祭も上棟式もお金をかけてやる必要がないという考えも多く、どちらもやらないケースも増えているようです。特に上棟式はあまり行われなくなっています。
ただ、建築に携わる職人さんも、建築業者も、こうした古来の伝統的習慣を重んじる方が多いのは事実です。特に地鎮祭は大切にされる方が今でも多いです。危険な現場に携わるにあたっては、儀式はきちんとしておきたいという気持ちも理解する必要があります。
何よりも工事を安全に、順調に進めていくことが大切なので、ここは施主の考え方と、業者や職人さんとよく話し合って、お互いに納得して進めていくことが大切です。施主の宗教上の理由で儀式はできないなどの場合も、訳を話せば納得してもらます。
これらの儀式を行わない場合でも、工夫して職人さんや建築業者、ハウスメーカーの担当者とは十分なコミュニケーションを取っていくことが、安全で順調な工事には必要なことです。